建設業の許可を受けた後も様々な手続きが発生します。
大まかに言うと、定期的に発生する手続きと発生都度変更の手続きをする2つに分けられます。
まずは定期的に発生する手続きから見ていきましょう。
定期的に発生する手続き

定期的な手続きで中心的なものは『決算変更届(事業年度終了報告)』と『許可の更新』です。準定期的なものとして、『経営事項審査』が挙げられますが、これは公共工事受注者を希望する業者が行う手続きなので別の機会に案内したいと思います。
上記の手続きは定期的に発生する上、手続きを怠ると不利益を被ることになります。必ず発生する手続きなので準備をしっかり行い、期日内にちゃんと提出しましょう。
決算変更届(事業年度終了報告)について

決算変更届(事業年度終了報告)とは、建設業許可事業者が決算終了後に毎年必ず提出しなければならない報告書で、事業の経営状況を行政庁に届け出るためのものです。
許可業者であれば法人、個人関係なく提出義務があり、こちらも手続きを怠ると不利益を被ることになりますので、しっかり報告しましょう。(建設業法第11条第2項)
提出の目的

行政庁が建設業者へ決算変更届を提出させる目的は下記になります。
ひいては財務状況の悪い建設業者から発注者を守るため、公共性の確保の指標として利用されます。
- 建設業者の経営状況を把握するため
- 許可要件(財産的基礎など)を維持しているか確認するため
- 経営事項審査を受けるための前提手続き
提出期限

提出期限は、事業年度経過後4ヶ月以内です。
例えば、3月決算の法人だと7月末までに提出となります。個人事業主の場合は、事業年度が1月1日から12月31日となるため、決算変更届の提出期限は4月末になります。
提出期限は上記のとおり決まっていますが、私は今のところ提出期限を超過しても指導されることなく受理してもらっています。
そうはいっても期限が決まっている以上、しっかり準備をおこない、期限内に速やかに提出しましょう。
では、決算変更届が未提出だとどうなるのでしょうか。
決算変更届が未提出だとどうなる?

決算変更届を未提出だと下記の不利益を被ります。
今後の会社経営に大きく影響しますので、滞ることのないように速やかに提出しましょう。
- 許可の更新ができない
- 経営事項審査が受けられない(公共工事不可)
- 行政指導や監査の対象になることも
また突発的に発生する変更届提出時にも、直近の決算変更届が必要書類の場合もあります。
未提出の決算変更届をまとめて数年分提出することもできるようですが、かなりの事務作業量となり許可の更新と併せてとなると本業が滞ることになりかねません。
また許可業者の要件でもある『誠実性』を損なうことにもなり、建設業者としての信用も失いかねません。
提出書類について

それでは提出する書類と添付資料を見ていきます。法人と個人で若干違いますのでご注意ください。
・決算変更届及び添付書類一覧
届出事項 |
要 否 |
変更届出書等の様式 | 添付書類 | |
毎事業年度(決算期)を経過したとき | ○ | ○ |
・決算変更届出書(法人)(excel・記入例) ・決算変更届出書(個人)(excel・記入例) |
・工事経歴書(様式第2号)(excel・記入例) <個人の場合> |
使用人数に変更があった時 | ○ | ○ | ・使用人数(様式第4号)(excel・記入例) | |
建設業法施行令第3条に規定する使用人の一覧表に変更があった時 | ○ | × | ・建設業法施行令第3条に規定する使用人の一覧表(様式第11号)(excel・記入例) | |
定款に変更があった時 | ○ | × | ・定款 | |
健康保険等の加入状況に変更があった時(従業員数の変更のみ) | ○ | ○ | ・健康保険の加入状況(様式第7号の3)(excel・記入例) |
許可の更新申請

建設業許可の有効期限は5年間です。
更新手続きは許可の有効期限が切れる3ヶ月前から30日前までに更新申請書を提出することで手続きが可能です。
許可の更新を忘れて期限を迎えると、有効期限の翌日から建設業許可は無効になります。
もちろん失効後に工事を請負うと、無許可営業になり建設業法違反になります。
また建設業許可の失効前に契約した工事であっても、失効後に施工を継続することは原則として認められていません。
つまり、許可が有効である期間中に契約した工事でも、施工時点で無許可であれば違法となる可能性があります。
決算の変更届のように、提出期限を過ぎても後追いで提出すれば大丈夫というレベルではなく建設業法違反による懲役や罰金、工事が継続できないということになれば契約先との損害賠償問題にも発展しかねません。
許可が失効してしまえば、また一から新規で許可を取得することになり、時間も費用も増大します。くれぐれも忘れることなく、早め早めの対応を心掛けましょう。
建設業許可更新申請・確認資料
申請書類は新規申請とほぼ同じですが、変更がなければ一部省略可能です。
下記に該当する場合は右欄の書類は省略可 | 様式番号 | 書類の名称 | 確認資料 | 備考 |
第一号 | 建設業許可申請書 | excel・記入例 | ||
個人 | 別紙一 | 役員等の一覧表 | excel・記入例 | |
別紙二(1) |
営業所一覧表(更新) |
excel・記入例 | ||
営業所の写真提出用台紙 | excel | 営業所名が確認できる入口から事務所までの導線や事務機器が確認できるもの。場合によっては間取り図も必要 | ||
別紙四 | 営業所技術者等一覧表 | excel・記入例 | ||
第2号 | 工事経歴書 | excel・記入例 | 経営事項審査の有無によって記入方法が変わる | |
第3号 | 直前3年の各事業年度における工事施工金額 | excel・記入例 | ||
第4号 | 使用人数 | excel・記入例 | 役員、職員を問わず雇用期間を限定されていない(常勤者)を記入 | |
第6号 | 誓約書 | excel・記入例 | ||
登記されていないことの証明書(法務局発行) | 法務局に請求。本人又は四親等内の親族、委任された代理人が請求できる | |||
身分証明書(本籍のある市区町村発行) | 本籍地の役所で請求。本人又は本人から委任された代理人が請求できる | |||
様式第7号の2による申請(常勤役員等を直接に補佐する者がいる場合)(注1) | 第7号 | 常勤役員等(経営業務の管理責任者)証明書 | excel・記入例 | |
別紙 | 常勤役員等の略歴書 | excel・記入例 | ||
様式第7号の2による申請(常勤役員等を直接に補佐する者がいない場合)(注1) | 第7号の2 | 常勤役員等及び当該常勤役員等を直接に補佐する者の証明書 | excel・記入例 | |
別紙一 | 常勤役員等の略歴書 | excel・記入例 | ||
別紙二 | 常勤役員等を直接に補佐する者の略歴書 | excel・記入例 | ||
第7号の3 | 健康保険等の加入状況 | excel・記入例 | 健康保険・厚生年金、雇用保険の事業所整理番号を記入 | |
保険加入の確認資料(別紙2) | ||||
各項目の該当者なし、又は前回申請時から変更なし(注2) | (営業所技術者等に係る) | 卒業証明書(卒業証書の場合は、写しを提出、原本持参) | ||
第9号 | 実務経験証明書 | excel・記入例 | ||
実務経験の確認資料(別紙1) | ||||
資格証等の提示+写しの提出 | ||||
各項目の該当者なし、又は前回申請時から変更なし(注2) | 第10号 | 指導監督的実務経験証明書 | excel・記入例 | |
指導監督的実務経験の確認資料(別紙2) | ||||
令第3条該当社なし(経営業務管理責任者たる支配人のみの場合も省略可) | 第11号 | 建設業法施行令第3条に規定する使用人の一覧表(excel・記入例) | ||
経営業務管理責任者は省略可 | 第12号 | 許可申請者の住所、生年月日等に関する調書(excel・記入例) | 役員、顧問、相談役又は総株主の議決権の5/100以上有する全員記入 | |
令第3条該当社なし | 第13号 | 建設業法施行令第3条に規定する使用人の住所、生年月日等に関する調書(excel・記入例) | ||
決算変更届(直近5年分)を提出済みの法人、又は個人事業主 | 第14号 | 株主(出資者)調書 | excel・記入例 | |
第15号 | 貸借対照表(科目説明) |
|
||
第16号 |
損益計算書・完成工事原価報告書(科目説明) |
excel・記入例 | ||
第17号 | 株主資本等変動計算書 | excel・記入例 | ||
第17号の2 | 注記表 | excel・記入例 | ||
第17号の3 | 附属明細書※資本金1億円超えまたは負債の部200億円以上の株式会社のみ提出 | excel・記入例 | ||
決算変更届(直近5年分)を提出済みの法人、又は法人 | 第18号 | 貸借対照表(個人用)(科目説明) | excel・記入例 | |
第19号 | 損益計算書(個人用)(科目説明) | excel・記入例 | ||
第20号 | 営業の沿革 | excel | ||
決算変更届(直近5年分)を提出済み | 法人・個人事業税納税証明書※未納のないことの証明書では不可 (決算未到来の事業者の場合:県税事務所への法人等設立届(写し)) |
納税証明書交付申請書 |
(注1)様式第7号または様式第7号の2のうち、いずれかでの申請が必要
(注2)営業所技術者等が変更する場合は、別途変更届出書(様式第22号の2)等の提出が必要
・以下については変更がなければ省略可能(変更がある場合は省略不可)
様式番号 | 書類の名称 | 確認資料 | 備考 |
第14号 | 株主(出資者)調書 | excel・記入例 | |
定款 | |||
商業登記全部事項証明書(法人)、履歴事項全部証明書(支配人登記をした個人) | |||
第20号の2 |
所属建設業者団体 |
excel | |
第20号の3 | 主要取引金融機関名 | excel |
発生都度の変更手続き

建設業許可を取得した後、許可内容に関わる重要事項に変更があった場合、行政庁に届け出る義務があります。これは建設業法第11条に基づくもので、定期的に発生する手続き同様、変更後一定期間内に提出しなければなりません。
変更届が必要な主な項目と期限
変更届の提出が比較的発生しやすい項目と期限です。
特に許可の根幹である『経営業務の管理責任者』、『専任技術者』には注意しましょう。これらは届出期限も短く、不在になると許可を維持できず、許可取り消しや廃業届の提出が必要になる可能性があります。
変更内容 | 届出期限 | 添付書類の例 |
経営業務の管理責任者 | 変更後14日以内 | 略歴書・誓約書・証明書類など |
専任技術者の変更 | 変更後14日以内 | 実務経験証明、資格証、誓約書など |
令3条使用人の変更 | 変更後14日以内 | 委任状、略歴書、誓約書など |
商号(会社名)の変更 | 変更後30日以内 | 登記簿謄本 |
営業所の新設・廃止・名称変更 | 変更後30日以内 | 営業所の写真、賃貸借契約書など |
役員の就任・退任 | 変更後30日以内 | 登記簿謄本・略歴書・誓約書 |
資本金額の変更 | 変更後30日以内 | 登記簿謄本 |
廃業 | 変更後30日以内 | 廃業届 |