建設業許可取得要件について
建設業許可を取得するにあたって様々な要件があり、人材的要件、財務的要件など様々です。許可取得申請にあたって要件確認のために証明書類が必要となります。
各許可要件とりまとめ
建設業許可の取得要件は下記の通りです。では、1項目ずつ見ていきましょう。
- 建設業の経営管理をする体制が整っている(経営業務の管理責任者)
- 営業所に技術力のある人がいる(専任技術者・主任技術者など)
- 工事を請負う財産能力がある
- 工事の見積、契約を行う適切な営業所がある
- 社会保険に加入している
- 役員や事業主等が欠格事由に該当していない
- これまで建設業を誠実に営んできた
建設業の経営管理をする体制が整っている(経営業務の管理責任者)
経営業務の管理責任者とは、常勤の役員や個人事業主等が個人として、もしくは組織として建設業の経営に関する一定の経験を有していることという要件です。常勤の役員や個人事業主等の個人の経営経験に基づいて、個人を経営業務の管理責任者とするパターンと組織としての経営経験に基づいて、組織を経営業務の管理責任者とするパターンがありますが、個人を管理責任者とするパターンにて要件を見ていきます。
・経営業務管理責任者の要件
系業務の管理責任者(個人)=「現在の地位」+(「過去の地位」×「経験」) |
・「現在の地位」:常勤の取締役、個人事業主、支配人等」 |
上記内容で当てはめて判断した場合、要件適合状況は下記になります。
経営業務の管理責任者要件 | 現在の地位 | 過去の地位 | 経験 | |||
不適合 | 常勤の取締役 | ○ | 個人事業主 | ○ | 3年の経験 | × |
適合 | 常勤の取締役 | ○ | 常勤の取締役 | ○ | 5年の経験 | ○ |
適合 | 常勤の取締役 | ○ | 令3条使用人 | ○ | 5年の経験 | ○ |
不適合 | 令3条使用人 | × | 令3条使用人 | ○ | 5年の経験 | ○ |
※令3条使用人とは、建設業を営む営業所の代表者で営業所長や支配人等のことです。
※上記の根拠法令は下記になります。
・建設業法施行規則(法第7条第1号の基準)
第7条 法第7条第1号の国土交通省令で定める基準は、次の通りとする。
一、次のいずれかに該当するものであること。
イ、常勤役員等のうち1人が次のいずれかに該当するものであること。
(1)建設業に関し5年以上経営業務の管理責任者としての経験を有する者
(2)建設業に関し5年以上経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者(経営業務を執行する権限の委任を受けた者に限る)として経営業務を管理した経験を有する者
(3)建設業に関し6年以上経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者として経営業務の管理責任者を補助する業務に従事した経験を有する者
営業所に技術力のある人がいる(専任技術者・主任技術者など)
建設業許可の要件の一つとして、営業所ごとに専任技術者を置くことが求められています。
建設工事に関する請負契約を適正に締結しその履行を確保するためには、建設工事についての専門知識が必要となります。そのため、一定の資格や経験を有する技術者を専任で営業所ごとに配置することが求められます。
専任技術者に求められる資格は、一般建設業許可と特定建設業許可で異なり、また業種ごとに必要な資格等の要件が異なります。
・専任技術者の資格要件
一般建設業許可 |
特定建設業許可 |
イ.学校卒業+一定期間の実務経験 |
イ.1級の国家資格者等 |
専任技術者とはその営業所に常勤して、もっぱらその職務に従事することをいいます。
専任技術者の住所又はテレワークを行う場所とその営業所の所在地が著しく離れていて通勤不可能な距離にある場合や、他の法令により専任が必要とされている者(例えば、専任の宅地建物取引士や管理建築士である者)が専任技術者と兼ねる場合は、原則として認められません。
また、専任技術者と工事現場の主任技術者又は管理技術者とは兼務することができません。専任技術者は営業所で職務を行わなければならず、営業所を離れ工事現場に出ることができないため、原則兼務が禁止されています。
・専任技術者と主任技術者を兼務するための要件
原則兼務が禁止されていますが、下記要件であれば、兼務が認められる可能性があります。
1.専任技術者が置かれている営業所で契約締結した建設工事であること
2.それぞれの職務を適正に遂行できる程度に近接した工事現場であること
3.営業所と工事現場が常時連絡を取りうる体制にあること
4.建設工事が、主任技術者の専任配置を必要とする工事でないこと
・専任技術者の役割
建設工事についての専門知識がある専任技術者は、営業所ごとに設置が義務づけられています。
その目的は、営業所の許可業種ごとの技術力を確保することです。
営業所においては、工法の検討や注文者への技術的な説明、建設工事の見積、入札、請負契約の締結等が適正に行われるよう技術的なサポートをし、工事現場に出る技術者に対しては、建設工事の施工が適正に行われるよう指導監督をするという役割です。
工事を請負う財産能力がある
建設業許可の要件の一つに「財産的基礎又は金銭的信用があること」という要件があります。
建設業を営むためには、準備として資材や機材の購入が必要となり、それらの購入資金が必要となるため、建設業許可を取得するには、最低限の基準を定めてその資金を有することを要件としています。
財産的要件は「一般建設業許可」と「特定建設業許可」とでは異なり、特定建設業許可の方が厳しい要件となっています。
・財産的基礎又は金銭的信用
一般建設業の許可を受ける場合 | 特定建設業の許可を受ける場合 |
次のいずれかに該当すること |
次の全てに該当すること 1.欠損の額が資本金の額の20%を超えないこと 2.流動比率が75%以上であること 3.資本金の額が2,000万円以上であり、かつ、自己資本の額が4,000万円以上であること |
工事の見積、契約を行う適切な営業所がある
適切な営業所とは、本店、支店、もしくは常時建設工事の請負契約を締結する事務所をいいます。
本店、支店は、常時建設工事の請負契約を締結していないとしても、他の営業所に対し請負契約に関する指導監督を行う等、建設業に係る営業に実質的に関与するものであれば営業所に該当します。
・適切な営業所要件
1.外部から来客を迎え入れ、建設工事の請負契約締結等の実体的な業務を行っていること
2.固定電話、机、各種事務台帳等を備えていること
3.契約の締結等ができるスペースを有し、かつ、居住部分、他法人又は他の個人事業主とは間仕切り等で明確に区分されているなど独立性が保たれていること
4.事務所としての使用権原を有していること
5.看板、標識等で外部から建設業の営業所であることが分かるように表示してあること
6.経営業務の管理責任者又は令3条に規定する使用人(建設工事の請負契約締結等の権原を付与された者)が常勤していること
7.専任技術者が常勤していること
※これらは写真や平面図等の提出や、場合によっては立入調査を行うことによって確認されます。
社会保険に加入している
令和2年10月1日から社会保険への加入が建設業許可の要件となりました。
また、令和2年10月1日以降に更新・業種追加する際にも先に健康保険に加入していることが要件となります。
・健康保険・厚生年金保険
法人は、健康保険・厚生年金保険原則適用事業所となっています。つまり、加入は義務です。
個人事業主の場合、家族従業員を除く従業員が5人以上いる場合は健康保険・厚生年金保険の適用事業所になります。
ちなみに健康保険は、適用事業所であっても法人(事業主)が健康保険適用除外承認を申請し、認められれば適用除外となりますが、厚生年金保険の加入は義務のままです。
また、この除外承認を受けるためには別途の健康保険(組合保険や土建国保など)の加入が必要です。
※適用の該当性についての確認は、最寄りの年金事務所もしくは社会保険労務士にご相談ください。
・雇用保険
1人でも労働者を雇用したら、法人・個人事業主の区別なく加入が義務づけられます。
法人の役員、個人事業主、同居の親族のみで構成される事業所の場合だと、雇用保険は原則適用除外になります。
※適用事業所の該当性についての詳細は、最寄りの公共職業安定所(ハローワーク)もしくは社会保険労務士にご相談ください。
・保険の該当の有無一覧
事業所区分 | 常用労働者の数 | 健康保険・年金保険 | 雇用保険 | 適用除外となる保険 | |
法人 | 1人 | ○ | ○ | - | |
役員のみ | ○ | - | 雇用 | ||
個人事業所 | 5人~ | ○ | ○ | - | |
1人~4人 | - | ○ | 健康・厚生年金 | ||
1人親方 | - | - | 健康・厚生年金・雇用 |
役員や事業主等が欠格事由に該当していない
欠格要件というものが建設業法上定められています。下記に該当する場合、許可を受けることはできません。
・欠格要件と誠実性
1.許可申請もしくは添付書類中に重要な事項について虚偽の記載があり、または重要な事実の記載が欠けているとき
2.法人にあっては、その法人の役員等、個人にあってはその本人、その他建設業法施行令第3条に規定する使用人(支配人、支店長、営業部長等)が、次の要件に該当しているとき
①破産手続きの開始を受けて復権していない者
②精神の機能障害により建設業を適正に営むにあたり、必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができない者
③不正の手段で許可を受けたこと等により、その許可を取り消されて5年を経過していない者
④③に該当するとして聴聞の通知を受け取った後、廃業の届出をした場合、届出から5年を経過しない者
⑤建設工事を適切に施工しなかったため公衆に危害を及ぼしたとき、あるいは請負契約に関し不誠実な行為をしたこと等により営業の停止を命ぜられ、その停止の期間が経過しない者
⑥禁錮以上の刑に処せられその刑の執行を終わり、またはその刑の執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
⑦建設業法、建築基準法、労働基準法等の建設工事に関する法令のうち政令で定めるもの、もしくは暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律の規定に違反し、または刑法等の一定の罪を犯し罰金刑に処せられ、刑の執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
⑧暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律第2条第号に規定する暴力団員または同号に規定する暴力団員または同号に規定する暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者
⑨暴力団員がその事業活動を支配する者
上記の欠格事由のどれか一つでも該当する場合、建設業許可は取得できません。犯罪歴等は確実に判明する為、正直に申告することが必要です。
また誠実性についても審査されます。
・誠実性とは
不正な行為:請負契約の締結又は履行の際の詐欺、脅迫等・・「法律」に違反する行為
不誠実な行為:工事内容、工期等「請負契約」に違反する行為
に該当しないことです。具体的な例では、建設業許可取得前に500万円(税込)以上の工事の請負契約をした場合、「誠実性」に欠けると判断されます。